弁理士ゆう~実務と勉強の雑感~

ひとり弁理士事務所における日々の実務の雑感

最近読んでいる本(実務書編)

最近、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)について勉強しています。

 

図書館から借りてきた本で恐縮ですが、秘密保持契約の良書と考えられる本として、

 ・『秘密保持契約の実務』(森本大介、石川智也、濱野敏彦編著)

 ・『秘密保持契約・予備的合意書・覚書の法務と書式』(牧野和夫著)

があります。

 

いずれも秘密保持契約について網羅的にまとまっていて、NDA初心者にも理解しやすいように感じます。

前者は、後半に不正競争防止法の解説も載っていて便利です(現在は、第2版が出ているようです)。後者は契約書の条項の例文に英訳も併記されていて英語の勉強にもなります。

 

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資格試験について(危険物取扱者試験)

唐突ですが、私は実益と趣味を兼ねて資格試験の勉強をすることがあります。

いままで取得した資格としては、弁理士以外では、宅建士やFP等があります。

 

その中で、昨年末に受験し合格した危険物取扱者(乙種第4類)試験の勉強等について書いていきたいと思います。

 

 

 

1.受験の経緯

受験の経緯ですが、「以前から興味があったから」と言ってしまえばそれまでですが、もう少し書いてみます。

 

普段、商標の他、特許業務もやっておりますが、基本的に機械、電気系の技術分野の特許の仕事をしています。

 

そこで、危険物取扱者試験に合格していれば、「化学も少しかじってます」というアピールができるのでは・・・という期待もあり、受験しました。

(直近の試験の申し込み期限日直前に英検に合格したので、やや勢いで申し込んだ側面もあります)

 

2.試験の勉強

勉強の期間は、1ヶ月くらいでした。

 

テキストは、『乙4類危険物試験 精選問題集』(鈴木幸男著・オーム社)を使用しました。

 

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このテキストはブックオフで500円ほどで買ってきたものです(他のテキストでも良いと思います)。

 

勉強の手順としては、はじめからテキストの問題(過去問に準拠した問題)を解いていきます。最初は答えを見ても構いません。

一回、問題を解いたら(読んだら)、二回目以降、問題を解くときは答えを見ずに解いていきます。

 

何度か解くうちに何回も間違える問題が出てきます。このように何度も間違えた問題に関連するテキストの解説文をチェックします(視覚的に記憶に残るように、適宜、テキストに赤ペンで書き込む等するのも有効かと思います)。

 

最近はYouTubeにも危険物取扱者試験対策の動画が多数出ているので、分からない科目は、こういった動画を参照するのも有効かと思います。

 

基本的には、「問題を解く→答えや解説を見て覚える→問題を解く→・・・」のサイクルの中で次第に解法が身についていきます(宅建士やFPの試験勉強も、この方法で合格しました)。

 

また、テキストの内容を全て暗記したり、問題集の問題を全て解けるまでになる必要はありません。3科目(「法令」、「物理・化学」、「性質・消火」)それぞれで60%以上正答すれば合格できる試験です。

 

3.試験結果

さて、このように勉強して臨んだ本試験ですが、結果は、

 

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<正答率>

法令:66%

物理・化学:70%

性質・消火:80%

 

法令はギリギリでしたが(法務の専門家として面目ありません!)合格でした。

 

危険物取扱者試験は、資格試験の中でも比較的合格しやすい試験だと考えられます。

しかしながら、一夜漬けで合格できる試験でもありません。

 

世の中には、「公認会計士」や「社会保険労務士」、技術系であれば「電験三種」等、難関とよばれる資格がいくつかあります。

いきなりこれらの難関資格に挑戦し一発合格することは素晴らしいことですが、簡単に達成できるものでないことも確かです。

 

一方で、少し難易度のある資格試験に挑戦し、これに合格したら少しずつ難易度の高い資格に挑戦していくというやり方もあります。

こちらのやり方によれば、少しずつ試験合格という実績を残していけますし、知識(視野)を広げることもできると考えられます。

 

私は昔、少し苦労して弁理士試験に合格しました。

その経験の中で感じたことの一つが上に述べたことでした。

現在、私は、英語や簿記の資格試験の勉強をしています。

多少、趣味的な側面もありますが、実務にも役立つと考え、取り組んでいます。

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今日も良い一日を

中国の商標出願

最近、中国への商標出願の機会があったので、中国商標出願の実務の雑感について書いてみます。

 

※当方の備忘録的な記事であり、全てを網羅的に解説するものではありませんので、その点、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

 

 

1.出願前について

まずは当然ながら、商標見本と、指定商品・役務を決める必要があります。

 

ここまでは日本における商標出願と同様ですが、日本と異なる点をいくつか挙げてみます。

 

まず、中国の商標出願では、「標準文字」の概念がありません。

もし、標準文字にて、例えば「BTS」のようなアルファベットからなる商標を中国で出願したい場合は、WordのCenturyの書体で出願するのがよろしいと思います。

 

また、平仮名、片仮名、漢字のような日本語の文字で出願したい場合、これらの文字は、図形として取り扱われる点、意味の説明が要求される点に留意する必要があります。

 

指定商品・役務は、原則として「類似商品・服務区分表」にある商品・役務を指定する必要があります。

中国の「類似商品・服務区分表」には、日本における指定商品・役務に該当するものが無いことも想定されますので、実際に使用する商品・役務により近いものを精査する必要があります。

 

なお、細かい点ですが、法人が出願人となる場合、法人名の中国語表記と英語表記が必要になります。

ここで、例えば、法人名が「株式会社BTS」のようにアルファベットを含む名前だった場合、中国語表記にアルファベットを含めることができず、中国語風に翻訳する必要が生じます。

 

2.出願後について

実体審査の結果、拒絶理由通知がされる場合がありますが、中国では、拒絶理由通知に対して日本で言うところの意見書の提出の機会は無く、いきなり拒絶不服審判を請求するか否か、という選択を迫られます。

 

しかも、拒絶不服審判の請求可能期間は、「拒絶通知の受領日から15日以内」と結構短いです。

 

一方、審査の結果、拒絶理由が無ければ、登録する旨の公告決定がされます。

 

公告日から3ヶ月間は異議申立てが可能(日本と異なり、「付与前異議申立て」であると言えます。)であり、異議が無ければ、晴れて商標登録になります。

 

3.全体的な感想

出願国たる中国で実際の手続を行う現地代理人(この場合は中国の弁理士、弁護士)からは、常に有益な情報を頂くことができます。

 

特に、いったん拒絶を受けると対応にあまり時間をかけられないため、出願前に、現地代理人と登録可能性について打合せておくことが望ましいと考えられます。

予算が許すのであれば、調査を依頼するのも良いでしょう。

 

こうしてみると、出願人と現地代理人との間に日本の弁理士を介さず、出願人と現地代理人が直接やりとりしたほうが、時間的にもコスト的に出願人の利益になるのでは、と思えなくもありません。

 

しかしながら、商標法(まして外国の法制)の独特の考え方を国内のご依頼者に分かりやすくご説明できるのは、日本の弁理士をおいて他にはないと考えています。

 

幸いと言うべきか、私にご依頼される方々も、私を介さず、直接、現地代理人とやりとりしたい、と仰る方は1人もいらっしゃいません。

 

私も、現地代理人の言うことを、ご依頼者に、ただ伝言するのではなく、何がご依頼者にとって最善の対応策なのか弁理士としての考えを付け加えさせて頂くことを常に心掛け、今後もそうありたいと考えています。

 

最後まで読んで頂きありがとうございます。

今日も良い一日を

戦時中の弁理士試験を想う

特許庁から「令和4年度弁理士試験受験案内」が公表されました。

 

詳細は下記URLをどうぞ。

www.jpo.go.jp

 

「受験案内」によると、試験日程は、

短答式試験       令和4年 5月22日(日)

論文式試験(必須科目) 令和4年 7月 3日(日)

論文式試験(選択科目) 令和4年 7月24日(日)

口述試験        令和4年10月22日(土)~24(月)のいずれかの日

となっており、最終合格発表は、令和4年11月10日(木)〈予定〉とのことです。

 

ちなみに、令和3年度弁理士試験の日程は、下記の通りです。

短答式試験       令和3年 7月18日(日)

論文式試験(必須科目) 令和3年 8月29日(日)

論文式試験(選択科目) 令和3年 9月19日(日)

口述試験        令和3年12月18日(土)~20(月)のいずれかの日

 

10年ほど前、短答、論文(必須科目&選択科目)、口述と受験した自分からすると、新年度は懐かしい日程に戻ったな~という印象です。

 

コロナ禍が今後どうなるか分かりませんが、弁理士試験も少しずつ以前の状態に戻っていくのが感じられます。

 

少し古い話になって恐縮ですが、太平洋戦争中の1944年1月28日の官報には、「昭和19年勅令第56号」の公布が記載されています。

dl.ndl.go.jp

 

「勅令」というと現代では聞き慣れない言葉ですが、明治憲法に規定された天皇が出す命令のことを言います。

 

この「昭和19年勅令第56号」は、「弁理士試験ノ停止ニ関スル件」とも呼ばれ、

弁理士試験ハ弁理士法施行令第一条ノ規定ニ拘ラズ当分ノ内之ヲ行ハズ

という条文の通り、弁理士試験を当分の間、実施しないことを定めています。

 

勅令で試験を行わないと言っているくらいなので、戦時中はおそらく本当に弁理士試験が実施されていなかったものと考えられます。

 

この「昭和19年勅令第56号」は、終戦後1年以上たった1946年11月6日に公布された「昭和21年勅令第528号」によって廃止されました。

おそらく、昭和22年度から弁理士試験が再開されたものと考えられます。

dl.ndl.go.jp

 

資格試験が日程に従って執り行われるというのは世の中が平和な証拠なのかもしれません。

 

今年、弁理士試験を受験される皆様は、お身体を大事にして試験勉強に取り組まれてください。

はじめまして

はじめまして。

 

この記事に興味を持って頂いてありがとうございます。

 

ここでは、今後、日々の実務の雑感や、時々、趣味関連のことなどを書いていきたいと思います。

 

皆様、どうぞ宜しくお願いします。

 

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