中国の商標出願
最近、中国への商標出願の機会があったので、中国商標出願の実務の雑感について書いてみます。
※当方の備忘録的な記事であり、全てを網羅的に解説するものではありませんので、その点、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
1.出願前について
まずは当然ながら、商標見本と、指定商品・役務を決める必要があります。
ここまでは日本における商標出願と同様ですが、日本と異なる点をいくつか挙げてみます。
まず、中国の商標出願では、「標準文字」の概念がありません。
もし、標準文字にて、例えば「BTS」のようなアルファベットからなる商標を中国で出願したい場合は、WordのCenturyの書体で出願するのがよろしいと思います。
また、平仮名、片仮名、漢字のような日本語の文字で出願したい場合、これらの文字は、図形として取り扱われる点、意味の説明が要求される点に留意する必要があります。
指定商品・役務は、原則として「類似商品・服務区分表」にある商品・役務を指定する必要があります。
中国の「類似商品・服務区分表」には、日本における指定商品・役務に該当するものが無いことも想定されますので、実際に使用する商品・役務により近いものを精査する必要があります。
なお、細かい点ですが、法人が出願人となる場合、法人名の中国語表記と英語表記が必要になります。
ここで、例えば、法人名が「株式会社BTS」のようにアルファベットを含む名前だった場合、中国語表記にアルファベットを含めることができず、中国語風に翻訳する必要が生じます。
2.出願後について
実体審査の結果、拒絶理由通知がされる場合がありますが、中国では、拒絶理由通知に対して日本で言うところの意見書の提出の機会は無く、いきなり拒絶不服審判を請求するか否か、という選択を迫られます。
しかも、拒絶不服審判の請求可能期間は、「拒絶通知の受領日から15日以内」と結構短いです。
一方、審査の結果、拒絶理由が無ければ、登録する旨の公告決定がされます。
公告日から3ヶ月間は異議申立てが可能(日本と異なり、「付与前異議申立て」であると言えます。)であり、異議が無ければ、晴れて商標登録になります。
3.全体的な感想
出願国たる中国で実際の手続を行う現地代理人(この場合は中国の弁理士、弁護士)からは、常に有益な情報を頂くことができます。
特に、いったん拒絶を受けると対応にあまり時間をかけられないため、出願前に、現地代理人と登録可能性について打合せておくことが望ましいと考えられます。
予算が許すのであれば、調査を依頼するのも良いでしょう。
こうしてみると、出願人と現地代理人との間に日本の弁理士を介さず、出願人と現地代理人が直接やりとりしたほうが、時間的にもコスト的に出願人の利益になるのでは、と思えなくもありません。
しかしながら、商標法(まして外国の法制)の独特の考え方を国内のご依頼者に分かりやすくご説明できるのは、日本の弁理士をおいて他にはないと考えています。
幸いと言うべきか、私にご依頼される方々も、私を介さず、直接、現地代理人とやりとりしたい、と仰る方は1人もいらっしゃいません。
私も、現地代理人の言うことを、ご依頼者に、ただ伝言するのではなく、何がご依頼者にとって最善の対応策なのか弁理士としての考えを付け加えさせて頂くことを常に心掛け、今後もそうありたいと考えています。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
今日も良い一日を